先週、安倍首相がリトワニアのカウナスにある杉原千畝記念館を訪問し、杉原外交官の勇気ある、人道的行為を日本人として誇りに思う、と発言したことが内外の新聞で報道されました。
第二次大戦中、北欧でナチスの手を逃れようとあがくユダヤ人たち7000人余りに、東京の外務省からの指令を無視して日本経由脱出できるようにビザを発給し続けたのでした。
私は、60年台の後半、エルサレムのヘブライ大学に留学していた時、この行動に対する謝意の表現としてイスラエル政府が出した奨学金をもらってヘブライ大学に入学した杉原氏の四男のヘブライ語の勉強の面倒を見てもらいたい、とイスラエル外務省から頼まれたことがありました。
安倍首相は、日本が尊敬に値する国だ、と外国に売り込みたいのでしょうが、杉原千畝は、戦後帰国した時、外務省から首になり、彼のお陰で生き延びることのできたユダヤ人たちが彼に一目会いたい、と外務省に援助を求めたのに、冷ややかにあしらわれた、という経緯があることをご存知でしょうか?
大東亜戦争は侵略戦争ではなかった、と公言して憚らない首相は、その戦争の過程で言語に絶する非人道的行為の限りを尽くした日本軍のことを正直に、勇気をもって認めてこそ、日本の名誉は挽回できるのです。それなくして、今回のような発言は恥知らずの、唾棄すべき偽善という他ありません。
20.1.2018
オーストラリア、メルボルンにて。